このミステリーがすごい!第1位!−独白するユニバー


「神です、神」−柳下毅一郎


東京伝説シリーズでは、すぐ隣にある狂気を余すところなく展開し、「本当に、本当は、人間が、一番、怖い」と震撼せしめた日本を代表する「怖い話」作家の渾身の1冊。

2006年度日本推理作家協会賞受賞作。


独白するユニバーサル横メルカトル


とっておきの悪夢がギチギチと詰まった珠玉の短編集です。


平山夢明の話にはすくいがない。


帰宅途中の電車で隣に座った男に、降りた駅の駐輪場で突然唇をむしり食われる、といった「なして?」感のオーバードライブ。こうしたから、ああしたから、こんな目にあってしまった、という説明が一切つかない不条理悪性腫瘍の精密な標本がここにあります(そしてそのあとには唇のもがれた私だけが残る)。


目覚めたあとにも続く「悪夢」。絢爛たる狂気の世界。


去年一番の幸せも、思い出したくもないヤなやつのことも、ラッキーもハッピーも、しょせんは私の認知世界内の「今日のできごと」に過ぎず、異世界から擦り寄ってくる「狂気」に触れたとたん霧散してしまう脆い今日であり、明日でしかない、ということをわずか数十ページの短編が思い知らせてくれます。


怖いだけでもない、痛いだけでもない、そういったものをすっと通り越したところにある冷たくて静かな場所。そういったものに少しだけ頬をよせてみたくなったとき、是非本作を手にとって見ることをお勧めします。そこには不思議な安らぎすらあるのだから。


まぁ正月に読む本じゃない。決して。


 このへんもお勧め。